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展覧会場
netarts.org 2009
    大賞受賞作
    優秀作品
    選考委員会

     

    ■ "VisitorsStudio "
    ■ http://www.visitorsstudio.org/
    ■ VisitorsStudio.org (英国)

    ■ 選評−ジョン・ホプキンズ 

     家から出て、わたしと遊ばない?

     今年の大賞受賞作品である"VisitorsStudio"は、オンラインの舞台であるが、ネット・アートの世界に新たにお目見えしたものと言うことはできない。もう何年も前から、視覚/サウンドによるライブでのコラボレーションの実験室として運営されてきているのだから。遊び場としてのこの作品は、使い方によっては自由なものにでも、何かしら制限を備えるものともなり得る。すべての遊びのための空間には、ある種の制限がある。あなたの母親は、あなたが遊ぶために外出することを許さないかもしれないけれど、彼女はきっと、"VisitorsStudio"なら許してくれるだろう。"VisitorsStudio"も、ファイル・サイズに制限を設けている。しかし、そのインターフェイスは直感的かつ理解しやすく、懸命に学ばなくても、誰でもあっという間に楽しみながら作品を作ることができる。

     ディジタルな遊びは、テキスト、イメージ(静止画/動画)、そしてサウンドから構成される。この作品への参加者は、それらの要素は自ら集めなければならないが、それをライブするための優れたコントローラーがあるので、演奏をせずにはいられないだろう。使用することができる既存のファイルのデータベースがあるし、あるいは、あなたは自分のライブラリーを準備し、それをアップロードして遊ぶこともできる。音声、イメージ、あるいは動画のファイルには、200kb以内という制約がある−あなたはきっと、そんな小さなファイルで何ができるだろう、と驚くに違いない−だが、小さなパッケージにすごいものが詰まっているということは、すばらしいことなのだ。

     この作品は、特別なパフォーマンスにも用いられるし、本当のインタラクティヴな(相互作用性の)ディジタル・アートで生徒の創造力を刺激したいと望む教育者のためにも、理想的な場を提供してくれる−それはシミュレィションではないし、単にきれいなだけのものでもない。コラボレーションするためのツールとしては、そのプロセスはそれほど際だったものではないが、しかしそれは、私たちが遊ぶことを助けてくれる、充実したプロセスなのである。

     もちろん、ジャム・セッションを楽しむ最高の方法は、強力な音響システムと72インチのプラズマテレビ、あるいはあなたのラップトップPCに据えたビデオ・プロジェクターが必要なのかも知れない。しかし、小さいスクリーンでのソロ演奏も、また非常に楽しいものである。しかしながら、最大の特色は、遠距離から接続している友人が飛び入りしたり、あるいは見ているという可能性にある。地球を半周したところの友人を、あなたのジャム・セッションに招待しよう!

     技術的には、この作品はインターネットへの接続と、もっとも新しいFlash のプラグインがインストされたブラウザしか必要としない。それに、もし私たちが頼んだら、Wii のコントローラーを使えるようにしてくれるだろう! 楽しいじゃないか? 遊ぼうぜ!

     今年の優秀作品の一つは、SiTOの"gridcosm"というプロジェクトである。それは、もしネットの最初期に、相互作用性のオンラインの遊び場所があったとしたら、これがそれである。この作品は、Ed Stasnyによって97年に創始されたのだが、それは、SiTOが組織したオンライン上のライブ、イメージのコラージュというコラボレーションにその源を持つ。それは、インターネットの時間でいえば、カンブリア紀以前のものとも言えるのだ。このプロジェクトは、それ自身のwikipedia の項目すら持っているのだ! 新鮮でアクセスしやすいインターフェィスのデザイン、堅実なプロセッシング、そして、オンライン上でコラボレートするこの意味が、つまり、貴重な社会的な感覚が滲み出ているのだ−何百という人が、参加しているのだから。その創始から12年も過ぎた今、このコラボレーションの空間には、各参加者の個性という、楽しい、常に進化するパレットが用意されており、創造的な本質というものが、スクリーンに映し出される。SiTOは、以前はOTISと称していたが、それは、Operational Term is Stimulate (操作の端末は刺激的)の頭文字であり、それは94年にさかのぼる、最初期のオンライン上のアーティストの協同制作のモットーでもあった。"gridcosm"は、その趣旨を変えずに存続し続けていること、また、活気のある未来像を見せてくれること故に、称えられねばならないだろう。あるアートワークが、宇宙規模の意義を備えたものとして分類されるためには、どれだけ多くの積み重ねが必要なのだろう? "gridcosm"を訪れ、そして、この深遠な問いへの回答を見つけよう! それは、誰もが参加できる、開かれたプロジェクトであり−SiTOのコラボレーションのプロジェクトはみなそうだが−これは要チェックである!

     これらのプロジェクトは、社会のネットワーキングとはどのようなものであるかを示すサンプルである−あなたの注意を引くことだけを目的とし、そのためには費用をいとわない、ウェブ2.0の狡猾な商用利用の急速な増加への、愉快にして元気づけられるような別の選択肢の一つである。広告もなく、スパムもない、演じるためのクールなスペースなのだ。お母さんに、そこで遊んでも良いかと聞くと良い。