■ 選評−マーク・アメリカ
「サウンドトランジット」、今年のネット・アート大賞の受賞おめでとう。わたしは、データの本質である「移ろいやすさ」というものを隠喩的に視覚化することにより、「サウンドトランジット」が現在という時代にタグを付ける手法に強い感銘を受けました。この作品の場合、それは、データの流れのネットワーク化されたスペースを通じて移植された「音」を想像することです。
今年は、受賞しても不思議ではないすばらしい作品が多数ありましたが、「サウンドトランジット」が最も今年のテーマに合致するものでした。特に、データを「間主観的にジャムすること」(タグすること)のためにネットワークを用いる方法、時空を超えて操作することの楽しさ、そして、その作品を完成させるために用いられている地理的な境界線を自意識的に操作することなどです。「音」ももちろん、すばらしい。
それから、優秀作品である"Postrecrets"にも触れておきたいと思います。これは、インターネット上で最もポピュラーなサイトの一つですが、それも当然のことでしょう。このサイトは、集団的な人々の群れの心が備える感情的深さを明らかにするものであり、その感情的な深さとは、わたしたち皆が従事しているインタラクティヴィティを非人間化するこのプロセスへと、社会の関心を向けさせるものなのです。それは、自己矛盾の最終陳述なのでしょうか? あるいは、あなたとは分かち合っていないわたし自身についての何かを、あからさまにしてしまうものなのでしょうか? 恐らく、その問いに向けてのわたしの匿名での回答は、"Postsecret"の中の、謎めいた表現形式の中にあることでしょう。
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