■ 選評−アニェゼ・トロッキ

　「フェラル・トレード」は、今年のテーマである「組織化される経験」の電子的な航跡である。それは、物質と電子ネットワークとを交差させるアート的な身振りなのだ。「フェラル・トレード」は、選ばれた物資の交易を通じ、異なった地域の間に有意義な回路を創り出す。そしてまた、経済的なネットワーク、交換のネットワークを創り出すが、それは、アート的、社会的、そして文化的な現実が発展することが可能な最も重要な背景なのである。私たちが既に知っていることをオールタナティヴに組織化するには、肥沃な土壌を必要とするが、「フェラル・トレード」は、何が生活の背景となり得るか、についての良く構築されたサンプルである。「フェラル・トレード」は、未来像に形を与え、そして同時に現実に深く根ざしている。それらの理由から、この作品が今年の大賞に相応しいと考えた。

　「ザ・リアルコスト」は、誰もがそのコンピュータにインストールできる、ファイアフォックス（ブラウザ）のプラグインである。それは、飛行機によるあなたの旅の「本当の価格」をあなたに気づかせる。航空会社に予約することでどれだけの二酸化炭素が放出されるかを、あなたに示してくれるのだ。それは、この現実の世界における選択の結果がどのようなものであるかを真に理解すること無しにオンラインで多くのことを行っている、私たちの日常生活を思い出させずにはおかない完全なサンプルなのである。